2017年1月20日金曜日

インキネン日フィル首席指揮者ブルックナーのインキネン的夜明け

本日はインフルエンザ明けで下記の演奏会を聴きました。



〇日本フィル第687回東京定期演奏会
開演:2017年01月20日(金曜日)19時00分
会場:サントリーホール
曲目:ブルックナー/交響曲第8番(ノヴァーク版)
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:ピエタリ・インキネン

新しいブルックナーの夜明け。
スタイリッシュ。喩えはあれだがチェリビダッケとかクナッパーツブッシュとかを「戦艦大和・武蔵」とすると今日のは「イージス艦こんごう」という趣き。
系譜で言うとベイヌムとかそういう辺りだろうか?
木管のハーモニーが彫塑されてオルガンで言うと中~高音がブラッシュアップされたような雰囲気だった。
ただ気になったのが第1スケルツォの終結部が走ること。繰返し後もそうだったので
奏者が勝手に走ったのでなくそういう風に指揮者にドライヴされたということ。ちょっと解せない。
演奏時間は18'16'30'25'だった。

2016年12月19日月曜日

2016年マーラーの全交響曲コンプリート

本年も、12月18日の国立マーラー楽友協会管弦楽団のマーラー9番をもってマーラーの全交響曲を聴くことができました。(10番を除く。)

以下がその記録です。

1月10日 交響曲第9番(第3・4楽章)(国立マーラー楽友協会管弦楽団)
1月18日 交響曲第1番「巨人」(シカゴ交響楽団)
1月27日 交響曲第5番(新日本フィルハーモニー交響楽団)
1月30日 交響曲第4番(日本フィルハーモニー交響楽団)山田和樹チクルス4
2月12日 交響曲第7番(読売日本交響楽団)
2月21日 交響曲第2番「復活」(日立フィルハーモニー管弦楽団)
2月26日 交響曲第5番(東京フィルハーモニー交響楽団)
2月27日 交響曲第5番(日本フィルハーモニー交響楽団)山田和樹チクルス5
2月27日 交響曲第5番(交響楽団はやぶさ)
2月28日 交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」(マーラー祝祭オーケストラ)
3月16日 交響曲第1番ニ長調「巨人」(新日本フィルハーモニー交響楽団)
3月26日 交響曲第6番イ短調「悲劇的」(日本フィルハーモニー交響楽団)山田和樹チクルス6
4月10日 交響曲第2番「復活」(新交響楽団)
5月05日 交響曲第8番「千人の交響曲」(ブルーメン・フィルハーモニー )
5月14日 交響曲「大地の歌」(東京シティフィルハーモニック管弦楽団)
6月19日 交響曲第1番「巨人」(みずほフィルハーモニー管弦楽団)
7月01日 交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」(新日本フィルハーモニー交響楽団)
7月04日 交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」(新日本フィルハーモニー交響楽団)(上記と同じ演目、ハーディング新日の最後)
7月14日 交響曲第6番イ短調「悲劇的」(読売日本交響楽団)
7月17日 交響曲第6番イ短調「悲劇的」(船橋フィルハーモニー管弦楽団)
7月24日 交響曲第2番「復活」(千葉フィルハーモニー管弦楽団)
7月25日 交響曲第5番(東京都交響楽団)
7月31日 交響曲第3番(都民交響楽団)
9月08日 交響曲第8番 変ホ長調「千人の交響曲」(NHK交響楽団)
9月17日 交響曲第5番(神奈川フィルハーモニー管弦楽団)
10月2日 交響曲第5番(TAMA21交響楽団)
10月6日 交響曲第3番(NHK交響楽団)
10月8日 交響曲第1番「巨人」(カラー・フィルハーモニック・オーケストラ)
10月9日 交響曲第6番「悲劇的」(ザッツ管弦楽団)
10月23日 交響曲第4番(麻生フィルハーモニー管弦楽団)
11月12日 交響曲第4番(横浜みなととなみ管弦楽団)
11月21日 交響曲第1番 ニ長調 「巨人」(サンフランシスコ交響楽団)
11月25日 交響曲第5番(パリ管弦楽団)
11月28日 交響曲第4番(東京都交響楽団)
11月29日 交響曲第5番(エルサレム交響楽団)
12月14日 交響曲第1番 ニ長調「巨人」(東京都交響楽団)
12月18日 交響曲第9番(国立マーラー楽友協会管弦楽団)

全37回。
今年は5番が9回と回数が多かったのと、滅多に演奏されない8番を5回も聴く機会に恵まれたのが特異でした。

国立のマーラー

  1. 本日は下記の演奏会に行きました。

  2. 〇国立マーラー楽友協会管弦楽団特別演奏会
    開演:2016年12月18日(日)15:00
    会場:一橋大学兼松講堂 ...
    曲目:マーラー/交響曲第9番
    管弦楽:国立マーラー楽友協会管弦楽団
    指揮:齊藤栄一

  3. 本日の演奏会はこの管弦楽団の創設者と言えるかたの追悼の演奏会とのことです。
    創設メンバーがたくさん参集しているとのことのようでした。(創設は1983年)


  4. 演奏は、追悼演奏会という考えを頭から外して聴くと、意外にも生気に満ち溢れた演奏で、しかも暴音に走らず、灯心がじりじりと音を立てて燃えていくような、人の心の強さを感じる演奏でした。
    弦楽器の知人が多く出演してるから言うわけではないですが、弦楽器が圧倒的。厚くてうねるところはうねり切ってた。薄くて枯れて果てるところは枯れ切ってた。その切れ方がすごい。すばらしい。
    管楽器も第1楽章の最後のフルートとホルンの掛け合いのカデンツとか息も絶え絶えなのがすごい。たぶん木管楽器のトップは創設メンバーと思われましたが渾身の力を込めているようなのに心が打たれました。
    そして大きく揺さぶったテンポなどを含めて、詩情が感じられました。特に中間楽章がそうかな。第1楽章も極めて厳しかったけれど上述のカデンツは息も絶え絶えながら詩情があったし、終楽章もまさに水が流れて元の形にないような詩的な幻影があった。
    追悼という考えからすると、故人を偲ぶというより、新しい旅立ちのほうに近かったかな?
    じゅ。は故人のことを存じ上げないのですが、この方が故人は悦ぶと思う。

2016年11月26日土曜日

パリのマーラー

本日(11/25)は下記のコンサートに行きました。

〇パリ管弦楽団日本公演最終日
開演:2016年11月25日 (金)19:00
会場:東京芸術劇場コンサートホール
曲目:
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
マーラー/交響曲第5番 嬰ハ短調
ヴァイオリン:ジョシュア・ベル
管弦楽:パリ管弦楽団
指揮:ダニエル・ハーディング

今年からパリ管の音楽監督に就任したハーディング直卒です。

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
ジョシュア・ベル初めて聴くのでちょっと楽しみ。
そのジョシュア、冒頭からそのかなり派手な動きと裏腹に腰の据わった艶のある旋律線とこぼれんばかりの美しい音色でメンコンを染め上げる。
せっかくだから静止して弾けば似合うのにと思ったら第2楽章は直立不動だった。
第3楽章はそのあでやかさと動きもようやくマッチした感じ。
動きに釣られず眼を閉じて聴けば凄い名演。(動きはバルトーク的かも)
それにしてももし万が一じゅ。のなご管でメンコンやることになったらじゅ。はクラリネット降り番ケテイ
こんなに上手に吹けないよ。速いパッセージもクリクリと鮮やか。

マーラー/交響曲第5番
ハーディングのマーラーの5番は東北大震災の翌日のチケットを持っていて演奏中止となり(当日は挙行・有名なドキュメンタリー番組となる)代替公演は仕事の日で聴けず結局払い戻しをしたので、是が非でも聴きたいと思っていた演目。
オケが震災翌日の新日フィルでなく、フランスのしかもパリ管弦楽団が独墺系の曲を演ずるというのはどうなることかと思ったが、最近いろいろと痛めつけられているフランスのパリがこの曲の普遍的な価値を捉えてあたかも「マーラー!なんとかしてくれ!!」と叫んでいるが如き第1部の第1・2楽章であった。適度な間を有しながら曲が進むにつれ間の停滞が後ろ髪を引くようになる。ほとんど類を見ない完璧な管打楽器に連綿とした弦楽器が嘆きの雨を降らせる。第3楽章でも初めはこの嘆きの感覚を引きずっているように見えたがだんだんとほぐされていく。これが初めからそのように設計されていたのなら見事だ。あたかも某ドラマでガッキーにより閉ざされていた心がだんだんと温かく溶けていくヒラマサさんのようだ。それを連綿としてシャンソンを歌うような弦楽器が支えていく。第4楽章は9分前後の短いものだったが連綿の極致で長く感じた。中間部が簡潔で連綿としつつも後ろを振り返ることを抑えて進む。圧巻の第5楽章は全体がイン・テンポで微速前進、それこそ後ろ髪を引かれてももう後ろは振り向かない。目を見張る金管の完璧さ。フーガの開始から終結まで息もつかせぬ弦楽器の追い込みの激しさ!パリは燃えているか?の言葉通りの大団円。
特筆すべきは弦楽器で、連綿とした歌を謳いながら死に物狂い。
また管楽器の美しさは比類がなく、それこそ心の内奥の表現の域に達する。
というか、この寒空の下、心の底まで冷え切った状態から人の情けで温まって溶けて解放されるさまを聴いて滂沱の落涙を禁じえなかった。

パリよパリ管よありがとう!

2016年11月20日日曜日

ブラームスのクラリネット三重奏曲の公開講座を聴講する

本日はフェイスブックのお友達が奏者で出演するブラームスのクラリネット三重奏曲を用いた音楽講座を聴講しました。

〇新音楽講座 ブラームス・クラリネットトリオ
日時:11月20日(日)14:30~
場所:KMアートホール(幡ヶ谷)
演奏者:山中麻衣子(cl)・友正逹美 (vc)・田北裕子(pf)
講師:重松正大先生

ブラームスのクラリネット三重奏曲をピアノがご専門の先生が指導するレクチャーです。
なかなか目から鱗なことが多々・・・
小さな音を強く響かせる弾き方とか、ウナコルダの効果的な使用方法とか・・・

本日の講座で感じたことというのは、本日の指導とは直接関係しないかもしれないけれど、この三重奏曲は極めてパーソナルな作品で、ピアノはブラームス本人が弾くことが前提となっていたのではないかと思われたこと。
老いてから巡り合った素敵なクラリネット吹きさん(ミュールフェルトのことです)のために。
君の音色の甘いも辛いも私のピアノで素敵に引き立ててみせる。
重松正大先生はレクチャーの冒頭で老いるということは感性が鈍るのではなくてむしろ心の襞がより深くなることで、ブラームスは老いていくうちにその襞にいろいろ溜まってきて発火寸前になっていた時に若いクラリネット吹きさんに巡り合って一気に爆発した、と述べていました。
じゅ。が思うに老いても感性は発火寸前で衰えることはないが、孤独ではあると思います。
クララ・シューマンに片思いしていても孤独が癒されることはなかったが、ミュールフェルトには癒された。その音色で。感性で。
本日のレクチャーで先生がピアニストに語ったことは、クラリネットの音色をピアノが護るということ。。
その老いての心のありようの可否はともかく、ありえないような芸術作品がこの世に遺されたことをじゅ。は悔やむまい。。。
そういえば、今日午前中に練習したブラームスの交響曲第1番は、新響のチェリストで大河ドラマのテーマ音楽の作曲家でもある坂田晃一氏がプログラムで納得してないと述べていたようにクララ・シューマンへのラヴ・レターに添えた楽句(第4楽章のホルンの山の呼び声です)などクララへの愛がちりばめられていたにもかかわらずクララには不評で、考えてみれば交響曲とはそのようなパーソナルなものではなくパブリックなものであるべきというクララの信念があったのかもしれない。(第2番以降は曲調が穏やかになりますが曲調とは裏腹にパブリック性は増すと思う。)
そう思うと、ブラームスとは真にパーソナルな音楽の作り手に相応しい作曲家なのであって、その真髄はミュールフェルトを得た晩年の諸作品にこそ発揮されていると思われるのです。

2016年1月2日土曜日

あけましておめでとうございます。昨年度のマーラー演奏会視聴記録

すいません、またしばらく更新を怠ってしまいました。。。
2015年の印象深かった演奏会などはまた追々載せるとしまして。。。
新春恒例?のじゅ。の2015年に聴いたマーラーの全演奏会記録です。
2015年は2014年よりさらに多くのマーラーを聴いたにも拘わらず、交響曲全曲制覇はなりませんでした。(ピアノ版を除く。ピアノ版8番第1部を入れるとかろうじて達成)
今年聴けなかった管弦楽の8番は、来年2回も聴くことになります。
来年こそは達成するでしょう。
また、2015年の特徴は、ピアノ版交響曲を数多く聴いたこと。ピアノ演奏はすべて大井浩明さんです。
あと、同日梯子、連日同一曲目・演奏者なども目立ちました。
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1月26日 交響曲第1番「巨人」(日本フィルハーモニー交響楽団)山田和樹チクルス1途中から
2月7日 交響曲第1番(NHK交響楽団)
2月15日 交響曲第5番(東京フィルハーモニー交響楽団)
2月22日 交響曲第2番「復活」(日本フィルハーモニー交響楽団)山田和樹チクルス2
2月25日 交響曲第6番「悲劇的」(東京フィルハーモニー交響楽団)
2月26日 交響曲第6番「悲劇的」(東京フィルハーモニー交響楽団)上記と同じ曲目・演奏者
2月28日 交響曲第3番(日本フィルハーモニー交響楽団)山田和樹チクルス3
3月1日 交響曲第10番より第1楽章アダージョ(かもめ管弦楽団)
3月1日 交響曲第1番「巨人」(かもめ管弦楽団)
3月15日 交響曲第9番(早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団)
3月15日 交響曲第9番(世田谷交響楽団メモリアルオーケストラ)
3月22日 交響曲第1番「巨人」(群馬交響楽団)
3月28日 交響曲第6番「悲劇的」(ロサンゼルス・フィルハーモニック)
4月8日 交響曲第7番「夜の歌」 (東京都交響楽団)
4月24日 交響曲第2番「復活」(読売日本交響楽団)
4月27日 交響曲第10番より第1楽章アダージョ(スティーヴンソン編ピアノ独奏版)
4月27日 交響曲第1番「巨人」(ステルヌ編ピアノ独奏版)
4月27日 交響曲第3番より 第2楽章・第6楽章(ヘンダーソン編ピアノ独奏版)
5月4日 交響曲第1番「巨人」(アーベント・フィルハーモニカー)
5月5日 交響曲第9番(カラー・フィルハーモニック・オーケストラ)
6月5日 交響曲第3番(読売日本交響楽団)
6月14日 交響曲第3番(東京アカデミッシェカペレ)
6月23日 交響曲第6番「悲劇的」(ツェムリンスキー編ピアノ四手連弾版)
6月23日 交響曲第7番「夜の歌」(カゼッラ編ピアノ四手連弾版)
6月23日 交響曲第8番「千人の交響曲」第1部(ヴェス編ピアノ四手連弾版)
7月4日 交響曲第5番よりアダージェット(音名オーケストラ)
7月4日 交響曲第4番(OB交響楽団)
7月10日 交響曲第2番「復活」(新日本フィルハーモニー交響楽団)
7月12日 交響曲第9番 (ブライアー編ピアノ独奏版)
7月17日 交響曲第9番(東京フィルハーモニー交響楽団)
7月18日 交響曲第2番「復活」(MAXフィルハーモニー管弦楽団)
7月25日 交響曲第1番「巨人」(東京交響楽団)
7月26日 交響詩「葬礼」、花の章(愛知祝祭管弦楽団)
7月26日 カンタータ「嘆きの歌」(1880年初稿版)(愛知祝祭管弦楽団)
8月2日 交響曲第6番「悲劇的」(千葉フィルハーモニー管弦楽団)
8月9日 交響曲第2番「復活」 (東京交響楽団)
8月15日 交響曲「大地の歌」(認定NPO法人おんがくの共同作業場)(シェーンベルク編室内楽版)
8月22日 交響曲「大地の歌」(マーラー祝祭オーケストラ)
8月29日 交響曲第7番「夜の歌」(オーケストラハモン)
9月13日 交響曲第3番(東京交響楽団)
9月16日 交響曲第5番(横浜交響楽団)
10月3日 交響曲第2番「復活」(NHK交響楽団)※パーヴォ・ヤルヴィ首席指揮者就任記念
10月4日 交響曲第10番より第1楽章アダージョ(東京楽友協会交響楽団)
10月4日 交響曲第5番(東京楽友協会交響楽団)
11月7日 交響曲「大地の歌」(日本フィルハーモニー交響楽団)※バリトン版
11月14日 交響曲第7番「夜の歌」(アマデウス・ソサイエティー管弦楽団)
12月11日 交響曲第3番(NHK交響楽団)
12月13日 交響曲第2番「復活」(富士フィルハーモニー管弦楽団)
12月13日 リュッケルトの詩による5つの歌曲(ピアノ版)
12月13日 子供の死の歌(ピアノ版)
12月13日 交響曲「大地の歌」(歌曲版・マーラー自身によるピアノ独奏版)※バリトン版
12月25日 さすらう若人の歌(特別編成オーケストラ)
12月27日 交響曲第5番(TBSK管弦楽団)
12月30日 交響曲第9番(アーベント・フィルハーモニカー)
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結局54回も聴いてしまいました。

2015年10月18日日曜日

矢代秋雄の天才の証明

本日は下記の演奏会に行きました。

○WINDS CAFE 226ー日本のヴィオラ音楽傑作集ー
 開演:2015年10月18日(日)15時
 会場:スペースDo(ダクの下)
 曲目:
 諸井三郎/ヴィオラとピアノのためのソナタ(1935)
 鈴木行一/ヴィオラとピアノのための響唱の森(2009・遺作)
 水野修孝/無伴奏ヴィオラのための四章(委嘱初演)
 西村朗/ヴィオラ独奏のための「鳥の歌」による幻想曲(2005)
 眞鍋理一郎/ヴィオラとピアノのための長安早春賦(1988)
 矢代秋雄/ヴィオラとピアノのためのソナタ(1949)
 演奏:伊藤美香(ヴィオラ)中川俊郎(ピアノ)

 日本人作曲家のヴィオラの作品ばかりを集めた演奏会。
 非常に貴重な機会でした。

 諸井三郎/ヴィオラとピアノのためのソナタ
 日本初のヴィオラソナタ、とのこと。
 音源がなく事実上の再演?
 ヴィオラらしく超重厚な作品。

 鈴木行一/ヴィオラとピアノのための響唱の森
 両国高校出身で長く淡交フィルの指揮者だった人。(淡交フィルの追悼演奏会を聴いたような。。。)
 美しいけど弓の切れた毛をちぎりながら弾くような激しい曲。

 水野修孝/無伴奏ヴィオラのための四章
 今日の演奏会のために委嘱された無伴奏の作品。
 水野さんの作品は時々聴くけど最も良い作品ではないか。

 西村朗/ヴィオラ独奏のための「鳥の歌」による幻想曲
 今日聴いた中では最も前衛的な作品。
 とは言いながら基底は鳥の歌で、それを高音の弱音でベースにして重音を重ねて作られている。

 眞鍋理一郎/ヴィオラとピアノのための長安早春賦
 今年年初に亡くなられた眞鍋理一郎の作品。元はヴィオラと箏のための曲。
 眞鍋先生の純音楽の中では緻密にして重厚、しかも朗々としていてこれも傑作。

 矢代秋雄/ヴィオラとピアノのためのソナタ
 存在だけは知られていて、ヴァイオリンでの初演は(それも死後20年以上経って)成されたが音源もなくヴィオラソナタとしては本日が初演。
 これは日本のヴィオラ作品としてというよりも世界の弦楽作品中の傑作ではなかろうか?
 冒頭からディーリアスのヴィオラソナタを暗くしたような音楽が高音部のヴィオラで語られ出す。それを聴いているだけで胸が熱くなる。伴奏のピアノはフォーレ的でもありドビュッシー的でもありサティ的でもあるがそのどれとも一線を画す独創的なもの。
 ヴィオラは高度な技巧を孕みつつも聴いている人間の心を温かくしたり寂しくしたりする憂いに富んだ旋律で文字通り琴線にぐいぐいと触れる。
 20歳そこそこの若者に何がこのような曲を書かせたものであろうか?
 恋だろうか?
 戦争中の鬱蒼とした暗さと戦後のまぶしすぎて目も心も眩む明るさのあまりの落差だろうか?
 とにかく本日ここに弦楽の世界に新たな傑作レパートリーが誕生した現場に立ち会えたのは慶賀の至りであろう。

2015年10月11日日曜日

早坂文雄の天才の片鱗

日付が変わりましたが昨日はこの10月15日が没後60年の早坂文雄を記念する演奏会に行きました。

○東響現代日本の音楽の夕べシリーズ第18回
早坂文雄没後60年記念コンサート
開演:2015年10月10日(土)15:00 ...
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
曲目:早坂文雄作品
映画「羅生門」から真砂の証言の場面のボレロ
交響的童話「ムクの木の話し」
交響的組曲「ユーカラ」
管弦楽:東京交響楽団
指揮:大友直人


今日は真の天才の音楽に接した。

映画「羅生門」から真砂の証言の場面のボレロ
ラヴェルのボレロとほとんど同じ出だしから全く異なる音像が立ち上がる。日本風な感覚とはまた170度くらい異なるモダンなテイストながら全体としては和風な感覚なのはこの時代の邦人作曲家が目指してなし得なかったものであろう。
ラヴェルのと異なり静寂から始まり静寂に終止。

交響的童話「ムクの木の話し」
スクリーンへのアニメーション上映付き演奏。
戦時中「海の神兵」などのアニメーションを上梓しながらその技術のほとんどを戦後破却されたと思わせるほどに稚拙ながらその何もない中でよくぞここまでという作りのアニメーションに、21世紀の今日でもまだ先を行く先鋭的な音楽が付された作品である。
クレジットから日本国憲法の公布と時をほとんど同じくしている当作品では冬を象徴するオオカミのような氷の魔物が周囲を全て凍結してその手下が木を凍らせて鉤十字にしてしまうなど進駐軍(が観ること)を意識したような作りが見られるがそれらは聖母マリア風の春の女神によって一掃されるなど全体主義への民主主義の勝利のようでありながらその実は戦時中までを冬の時代戦後を春の訪れとして描いており、それを追いかけるように管弦楽が禿山の一夜風の冬から独創的な春の音楽を導く。
フルートが全員ピッコロに持ち替えて凄まじい鳥のさえずりを上げ、風音器・雷音器もないのに凄まじい暴風の様子が描かれていた。

交響的組曲「ユーカラ」
ほとんど交響曲に匹敵する作りであるが独創的。
赤にライトアップされたクラリネットの超絶独奏に始まり武満徹的二つの弦楽合奏の楽章に挟まれて両端に大規模な管弦楽を持つ。
全く類例を見ない作りでこれを聴くと弟子筋の武満徹や佐藤勝がまるで早坂の縮小再生産のようだ。

以上三曲とも弦と打楽器を中核に据えて高音で勝負していて、聴後感はまさに風(Breeze)が通り過ぎる如し。

2015年10月9日金曜日

リントゥのシベリウス、新日本フィル

10月7日リントゥのシベリウスの演奏会の記録です。

○シベリウス生誕150年記念交響曲全曲演奏会第1回
開演:2015年10月7日(水)午後7時
会場:すみだトリフォニーホール
曲目:シベリウス作品
交響曲第3番ハ長調作品52
交響曲第4番イ短調作品63
交響曲第2番ニ長調作品43
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:ハンヌ・リントゥ

今シリーズは第1回のみ鑑賞。

交響曲第3番
落ち着いた演奏で、俗に言われる第2番より田園交響曲と言うに相応しい拡がりを持っていた。

交響曲第4番
じゅ。が生で聴いた4~5回の4番の中では最も素晴らしい演奏。
氷のような冴え冴えとした出だしから氷の城が築かれて鉄琴で氷の外壁にピキッとヒビが入って温まるまでの叙景のよう。アナ雪みたい?
よく、マーラーと面会した1907年以降、世界を包容するマーラーの交響曲へのアンチテーゼとして内的統一の権化のような評価をされる4番ですが、今日の演奏を聴いているとシベリウスなりに世界を包容してみようとして書かれたようにも思う ただし緊縮の方向に包摂。緊縮の方向だが第4楽章で溢れる世界を堰き止められなくなった。そういう演奏。

交響曲第2番
第1~3楽章までは非常に標準的にそくそく行った感じ
こちらも第4楽章で堰が決壊したように奔流が迸り出た
ハッとするようなルバートもあったりして、この名曲をかなり自由に料理したようだ。
個人的には、5月のサラステ/N響の超名演にはちょっと譲る感じではあるが、新日本フィルがリントゥの雄渾な棒によくついていったと思う。